徒然なるままに

鮮やかな光のこと

  これからキャッチミー・イフ・ユー・キャンというミュージカルに出会えた最高の夏について話したいと思う。きっと一生忘れられないだろう夏。私の人生が鮮やかになった夏だった。
 まとまらない気持ちをなんとか言葉にしているのでわかりにくいところも沢山だと思いますがよければお付き合いください。区切りとしてスノラボのフラゲ日までには完成させようとしてたのにこんなギリギリになってしまい、涙…。


 

 最初にひかるの声を聞いた時に感じたあの衝撃を私はずっと忘れないんじゃないだろうか。脳がビリビリして「フランクだ…」って思った。
 16歳のフランク・アバグネイル・Jr.がそこにいた。16歳のフランクは、太平洋みたいに広い肩幅なのに少年みたいに小さくてなんだか情けなくて生意気で、でもどうしようもなく愛おしかった。ずっと声が幼くて生意気で、無限の可能性秘めてる若い命の一瞬の煌めきみたいなものを感じた。真っ新な青々しさだった。
 舞台のなかのフランクが自由自在に世界を飛び回っていたように舞台のなかのひかるも自由自在に子どもと大人を飛び回っていて、そのアンバランスさや思春期特有の曖昧さを素直に演じてたなって思った。無邪気な危うさの表現が本当に上手かったと思う。私は映画を見てフランクのことを天性の人たらしだなって感じて舞台を観たわけだけど、それは舞台も同じだった。むしろ映画よりも素直さや無邪気さが前面に押し出されていた分、どこか危なっかしくてなんだか放っておけない、みんなが惹かれてしまう人という印象をより感じたかもしれない。
 天性の人たらし。賢さと無邪気さ。舞台のフランクとひかるがリンクしていたのはここなんじゃないだろうか。

 

 学生新聞の記者を演じたところがとても好きだったんだけど、「新聞記者を演じるフランクJr.」の演じ方がすごくナチュラルだったから。演じる姿を演じてるのが一目でわかった。疾走感あふれる台詞は面白かったし、あのひかるめちゃくちゃコミカルで可愛くってお茶目だったもんね。
 同じようにシークレットサービスの人間として初めてカールと対面するシーンはちゃんと「子どもが演じる大人」という感じがした。年齢としては29歳のひかるに1番近いはずなのにその声色を聞いた時に感じた微かな違和感。私はこの違和感がとても嬉しかった。それは、舞台にいたフランクが確かに16歳ほどの若い青年であるとこちらが当たり前のように受け入れていたから生まれたものだろうから。
 鼻水カールの背広で拭くフランクがとっても子どもに見えて、フランクに本当に心を許しているようで好きな仕草だった。成長して諦めだとかを知って、人間が持つ無限の可能性のなかでも子どもだけが持つ独特の一瞬の煌めきは確かに落ち着いたのに、それでもやっぱりまだまだ子どもなところが愛らしくて好きだった。

 

 ひかるが普通の人では聞こえない音が聞ける人なだけあって、ひかるのダンスで出会う音が沢山あるなって改めて感じた。私には聞こえない音がひかるのダンスを通して聴こえた。オーラというか華やかさというかこの人は板の上で輝くために生まれてきたんじゃないかと思うほどで改めて圧倒された。
 ミュージカルとひかるの親和性の高さは、彼が踊るように生きている人だからだと思う。ひかるの振り付けは日常生活のちょっとしたことからインスピレーションを得ているもので、生活にダンスが溶け込んでいるけれど、それが前面に押し出されるミュージカルはすごく親和性が高いんじゃなんだろうか。
 振り付け指導はしっかりされているだろうけれど、節々に岩本照を感じるあの独特な洒落っ気が垣間見られて、他の誰でもないひかるだけが生み出せるフランクを見られてよかった。


 
 そしてなによりもキャッチミーという舞台に出会えて本当によかった。カンパニーの方達のとんでもない輝きにめちゃくちゃ圧倒されて「ミュージカル最高〜‼️」の気持ちがブワッと燃え上がって心が元気になったから。
 カールの栄作さんが愛情深くて少し不器用でどこかお茶目で最高だった。タップダンスよかったな〜。スラッとした長身で足が長くてクールで渋い人だけどなんだかお茶目で素敵だった。とても有能だけど不器用で真っ直ぐで、フランクとカールが舞台を2分割する演出がとても好きで2人で成り立つ物語なんだなって感じた。
 それとFBIだけのダンスナンバーが最高にかっこよくてずっと見ていたかったな。最初の方の男性陣だけのかっこよさにツカツカヒールの音を響かせながら加わる女性陣の美しさ、全てが融合して痺れた一曲だった。
 アンサンブルの方々の惹き込む力がすごすぎて本当に目が足りない。私は「ドクターの言いなり」がめちゃくちゃめちゃくちゃ好きで気合い入れたい時このブロードウェイ版聞くくらい好きなんだけど、アンサンブルの皆さんの身体の魅せ方とか足先から爪先までみなぎるエネルギーとか、体全体から爆発しそうに溢れる生命力に圧倒されてワクワクが止まらなかった。
 あとさ、横山由依ちゃんめちゃ可愛かったな。愛嬌たっぷりで、セクシーなお姉さん達と比べるとそのキュートな愛らしさが強調されていて、大人の世界で大人のフリをして渡り合っていくフランクが恋焦がれる理由がわかった。私はFry awayのブレンダの歌声にダバダバ泣きました。涙が止まらなかった。
 私かなりシェリル・アンが好きなんだけど、彼女が若干オモロキャラだったの愛すべきで本当良かった。あんなに綺麗で華やかなのにチャーミングであれは翻弄されちゃうよね。

 フランクの両親の声量と声の深みが半端なくてこれぞミュージカルだった。台詞から歌に入るのがあまりにも自然で舞台に生きる人のすごさに圧倒された。ずっと聴いていたい歌声で今でも耳奥に残ってる。

 演出の方にもたくさん目がいったけど、あれだけの舞台装置でいろんなシーンを作るのすごい。空間演出がとっても面白かった。なかなか舞台装置の細かいところまで見れなかったのが少し悔やまれるポイントではあるな…。それと衣装を舞台上で鮮やかに変えるのが本当に好きだった。それすらも演技の一つになる演出が良すぎたな。フランクがくるくるターンしながら衣装を変えていくところが巧妙な軽やかさを強調しててよかった。
 あとシンプルに考えて全公演生オーケストラって半端なく豪華じゃありませんか!?心が震える演奏だった。沢山の沢山の人が集まって作られたこの舞台が、この時代に40公演完走できたっていうのは本当に奇跡に近くて、でも決して偶然ではなくて関わった人たちの目には見えない多大な努力があったからできたことだと思う。そうしてこんなにも素敵な舞台を届けてくれたことに心の底から感謝したい。

 

 

 あと印象的な台詞があったなって今思い返した。父親がフランクに向かって言う「ピーターパンはもう卒業だ(ニュアンス)」っていう台詞、もともとブロードウェイ版にもある台詞なんだろうけど、素敵な偶然でひかるに巡り合った台詞だと思う。ジャニーズに入る前にピーターパンの舞台に出て国際フォーラムに立ったひかるが今年ミュージカルの主演として国際フォーラムに戻ってきた。ひかるはもうピーターパンの舞台として国際フォーラムに立ったあの頃にはもう戻れないけれど、あの頃から地続きで歩んできて今がある。そしてこれからもその続きに未来がある。ひかるの過去と現在と未来を思い起こすような台詞だったなってふと思った。

 


 ここからはキャッチミーという舞台自体の内容について触れていこうと思う。(私個人としてこの話はフランクとカールの物語だと感じたからこの2人に特に着目して。)
 フランクが父親とは背中合わせで「僕らは2人で一つ!」って言ってたり、父親の背中に向かって語り掛けてたりしてたのが、カールとだと向き合ってそして横並びになってて「僕らはずっと隣」になっててそこの対比がすごく好きだった。
 フランクが追いかけていたのは昔の幸せな家族と父親の背中でそれは時が経つにつれてどんどん遠のいていくものだったんだけれど、カールはそんなフランクをずっと追いかけていて、時が経つにつれて2人の距離は縮まっていってピースがしっかりハマって横並びの相棒になるんだよね。父親とは一方通行だったフランクの愛がカールと向き合えたのが最高のハッピーエンディングだよなって思う。
 フランクが家出をしたとて両親は探してくれなかったし、ブレンダも最後はフランクに着いてきてはくれなかった。唯一フランクを追いかけ続けて、あのままだとどこかに消えてしまいそうなフランクの愛という感情を捕まえてくれたのはカールだったんだなと思うと関係性の深さに泣いてしまうな。
 普通パイロットとか医者とか弁護士とかが突然消えたら大騒ぎで探し回ることになりそうだけどその描写があまりなくて、なんなら「そんな医者もいましたね」って感じでサラッと流されてた感じが、よりフランクの孤独感を強めていて好きな演出だった。真っ直ぐにフランクを追いかけるカールがより際立つようにもなってたし。
 カールと追いかけっこをするうちにフランクは「子ども」を取り戻しながら成長して本当の意味で「大人」になっていったんだと思う。
 「フランクは何者にもなれたけど、誰かにとって特別な誰かにはなれなかった」んじゃなくて、最初はカールが追いかける数多くいる詐欺師の中の1人だったフランクが最後には息子のような相棒のようなカールにとって"特別な誰か"になれたっていうエンディングの描き方がとても気持ちのいい終わり方だった。

 


 ダブルカテコはフランクがひかるに戻る瞬間って感じでそれもまた良かったな。それだけこの公演でひかるがフランクとして全てを出し切った感じがしたから。あれだけの台詞とダンスが詰まった公演を、余裕とはまた違う余力なんて全く感じさせずに毎回これが千穐楽だと言わんばかりに出し切るひかる、正真正銘のエンターテイナーだった。
 最後の最後に階段にちょこんって座ってニコニコしながらバイバーイってしてたのは、その…さすがに許せませんけど…(←やっぱりね)。

 

 メンバーやひかると今まで共演した方達が沢山観劇にいらっしゃっていたのもなんだか嬉しくなってしまって。ひかるは愛が集まる人なんだね。


  

 私はこの舞台を見る前から、ひかるの「ミュージカルは観終わった瞬間からその人の人生を鮮やかにする」って言葉が本当に好きで。きっとこれは「Live in living color」からきているものなんだろうけれど、それを体現するミュージカルだった。
 ひかるに出会ってからより一層鮮やかになった私の人生は、キャッチミーイフユーキャンを観終わってからまた確かに鮮やかになったと思う。この夏に、岩本照という命がフランク・アバグネイル・ジュニアとして輝いているところを見られて本当に良かった。忘れられない夏だった。ひかるはこの夏が終わったらフランクではなくなるけれど、フランクとして生きた夏はひかるのなかに残り続けてこれからのひかるの一部になるんだろうと思うと、これからが楽しみでしかたない。本人がこれから挑戦したいことにミュージカルを挙げていたのも本当に嬉しい。とってもとっても楽しくて大きな糧となる舞台だったんだろうなってことが伝わってくるから。
 ライブの時の「今夜の主役は俺で決まりさ」の魂燃やしてるひかるが好きだけど、今回の舞台はただただ真っ直ぐに素直にフランク・アバグネイル・Jr. として生きているひかるを見て、このきらきらした命の輝きが本当に好きだなって思った。そこにいたのは確かに岩本照で、そして岩本照じゃなかった。
 ひかるが0番で歌って踊ってる時、思わずオペラグラスを覗き込むのをやめた。オペラグラスも何も通さないでただただひかるからみなぎる全てのオーラを感じたかったから。あの輝きを一瞬たりとも見逃したくなかった。ひかるの表情だけじゃなくて、このカンパニーの、この舞台のど真ん中で命輝かせてるひかるを見たかった。
 
 ひかるは踊るように舞台の中で生き生きと生きていて、観劇した日の夜は、気持ちが昂って眠れなくて、今この瞬間に抱いた思いを言葉にまとめたくてもまとまらなくて、もどかしくて、そのもどかしさにもう少し浸っていたくて…色々な感情がないまぜになってどうしようもなく泣きたくなった。
 今日、この公演は二度となくて、この公演のひかるには二度と会えないという儚さと一抹の寂しさを感じていたからかもしれない。でも舞台って、生のエンターテイメントってそれが醍醐味だと思う。私は確かにこの夏キャッチミーイフユーキャンでひかるのフランクに出会えた。観客の1人でしかないけれど、確かに心で通じ合えた、そんな気がする。

 ひかるはgiftedとtalentedのバランスがとても良い人。持って生まれたオーラとセンス、そして今まで培った表現力、人知れず積み重ねられたたゆまぬ努力、今回の練習期間で得た沢山のもの、全部がひかるの血肉になってあの足捌きや指の動きになったんだろうなと思うとどうしても胸がいっぱいになってしまう。

 ひかるのことを、スポットライトに愛されて舞台が追いかけてしまう人間だと思ってるから、ひかるが裏方に絞る道も考えてるなんて言った時は悲しさもあったんだけど、でもなんていうんだろう。この人の才能と努力をもってすれば、きっとひかるがいる場所がスポットライトのあたる場所なんだって思った。だって、あんな輝き追いかけてしまう。どうしたって心が惹かれてしまう。ひかるは、鮮やかな光だ。
 なんかもう…私がスポットライトなのかもしれん(←エ!?)  だからこれからひかるがどんな場所でどんなことに挑戦しても、それが見えても見えなくても、その道のりに幸多かれと願いながら、淡い小さな光であっても照らし続けたいと思う。そんな存在を見つけられたことを嬉しくそして誇りに思いながらこのブログを締めたい。もっともっと細かく好きだったシーンについて書きたいから加筆する可能性大だけど、ここを区切りとして終わりたいと思います。


 
 キャッチミー・イフ・ユー・キャン、最高のミュージカルだった!一生忘れられない、最高の舞台をありがとうございました!関わった全ての人のこれからが彩り溢れる鮮やかなものでありますように。